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死亡保険金を年金で受け取った場合の税務☆

概要

死亡保険金については、契約者・被保険者・死亡保険金受取人の関係で、相続税の課税対象となるとき、所得税の課税対象になるとき、贈与税の課税対象となるときがあります。

但し、これは死亡保険金を一時金で受け取った場合です。

一方、死亡保険金を年金(分割)で受取った場合にはどのような課税関係になるでしょうか?

これを一覧表にすると次のようになります。

契約者被保険者死亡保険金受取人死亡時年金受取時
AAB相続税2年目以降、所得税(雑所得)
ABA初年度から所得税(雑所得)
ABC贈与税2年目以降、所得税(雑所得)

年金が死亡時に相続税・贈与税の課税対象となる場合

死亡保険金を年金(分割)で受け取る場合で、契約者=被保険者のAABの契約形態のとき、または契約者・被保険者・死亡保険金受取人が全て異なるABCの契約形態のときには、被保険者が死亡した初年度は、それぞれ相続税・贈与税の課税の対象となり、所得税については二重課税排除の観点から非課税となります。

この場合、相続税・贈与税の評価額は、年金受給権の権利として評価されます。

翌年以降は、受け取った年金に対して所得税が課税されることになりますが、相続税・贈与税で評価された部分は既に課税されていますので、年金総額のうち、まだ課税されていない残りの部分について、所得税の課税対象となります。

初年度の相続税・贈与税評価額

初年度の相続税・贈与税の年金受給権の権利の評価は、次のうち最も大きい金額となります。

①解約返戻金の金額

②年金に代えて一時金として受け取れるときには一時金の金額

③残存期間(確定年金)や平均余命(終身年金)に応じ予定利率等をもとに算出した金額
確定年金の場合
年金年額×残存期間に応じた予定利率による複利年金現価率(平成30年基準年利率

終身年金の場合
年金年額×被保険者の平均余命に応じた予定利率による複利年金現価率(平均余命表

具体例

【問題】
契約者・被保険者が夫、死亡保険金受取人が妻の定期保険(保険金額3,000万円、保険期間30年、死亡保険金の年金支払特約付)の契約があり、契約後10年後に夫が死亡し、妻は死亡保険金3,000万円を一時金ではなく、20年の分割で受け取ることを選択しました。この場合、初年度の相続税評価額はいくらになるでしょうか?
尚、相続人は妻と子供2人です。

《契約内容》
死亡保険金 3,000万円(無解約返戻金タイプ)
毎月の保険料    1万円
保険期間     30年
20年の分割で受け取る場合の年金年額168万円
予定利率    0.25%

【解答】
死亡保険金の相続税評価額は、年金受給権の権利の評価となり、次のうち最も大きい金額となります。
①解約返戻金の金額 0
②年金に代えて一時金として受け取れるときの一時金の金額 3,000万円
③残存期間に応じ予定利率等にもとに算出した金額
168万円×19.484※=32,733,120円
※平成30年基準年利率表の年0.25%の複利年金現価率20年ご参照

よって①から③で最も大きい金額は32,733,120円(相続税法第12条適用前)

この場合、死亡保険金受取人が相続人の妻ですので、相続税法第12条の非課税の適用があります。

他に加入している保険がなかったとしますと

32,733,120円ー500万円×3人=17,733,120円(相続税法第12条適用後)

よって 相続税の課税価格に算入される金額は、17,733,120円となります。

翌年度以降の所得税の計算

死亡保険金を年金で受け取る場合には、被保険者が死亡した初年度については所得税は非課税ですが、その翌年以降はその分割で受け取る金額(年金年額)に対し、所得税がかかります

国税庁のタックスアンサー№1620を引用しますと、計算方法は次のようになります。

《計算方法》課税・非課税部分の振り分け

算式 課税部分1課税単位当たりの金額=課税部分(※1)÷課税単位数(※2) 各年分の総収入金額(課税部分)=1課税単位当たりの金額×経過年数

※1 課税部分の金額 = 支払金額 × 課税割合

課税割合は、相続税評価割合に応じ、それぞれ次のとおりです。

[算式]相続税評価割合=相続税評価額÷年金の支払総額又は支払総額見込額

相続税評価割合課税割合相続税評価割合課税割合相続税評価割合課税割合
50%超 55%以下45%75%超 80%以下20%92%超 95%以下5%
55%超 60%以下40%80%超 83%以下17%95%超 98%以下2%
60%超 65%以下35%83%超 86%以下14%98%超0
65%超 70%以下30%86%超 89%以下11%
70%超 75%以下25%89%超 92%以下8%

相続税評価割合が50%以下の場合の計算方法については、税務署にお問合せください。

※2 課税単位数 = 残存期間年数 × (残存期間年数 - 1年) ÷ 2
課税・非課税部分の振り分け説明図

具体例続き

上記具体例で、相続発生の翌年以降の年金年額168万円に対して所得税が課税されますが、翌年以降の所得税はいくらになるでしょうか?

国税庁のタックスアンサーの計算方法をもとに相続発生後の6年目の所得税の計算をしますと次のようになります。

1.総収入金額の計算

①相続税評価割合
相続税評価額(法12条適用前)÷年金の支払総額又は支払総額見込額
32,733,120円÷33,600,000円(168万円×20年)=0.9742⇒98%(小数点第3位以下切上げ)

②相続税評価割合に応じた所得税の課税割合
相続税評価割合98%⇒所得税課税割合2%

③総収入金額
・課税部分の合計額 33,600,000円×2%=672,000円
・課税単位数 20年×(20年ー1年)÷2=190単位
・1課税単位当たりの金額 672,000円/190単位=3,536円(円未満切捨て)
総収入金額 3,536円×5年(経過年数)=17,680円

2.必要経費の計算

 各年の総収入金額×※(払込保険料の合計額/年金の総支給見込額)=各年の必要経費(円未満切上げ)

※(払込保険料の合計額/年金の総支給見込額)は小数点第3位以下切上げ

よって17,680円×{120万円(1万円×12ヵ月×10年)/3,360万円}=708円

3.雑所得の金額

17,680円ー708円=16,972円

年金が所得税の課税対象となる場合

死亡保険金を年金(分割)で受け取る場合で、契約者=死亡保険金受取人のABAの契約形態のときには、初年度から雑所得として所得税の課税対象となります。

詳細については次をご覧下さい。

https://www.hokenzeim.com/%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E4%BF%9D%E9%99%BA%E9%87%91%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88/

最高裁の判決(参考)

実は以前、死亡保険金をAABの契約形態で年金で受け取った場合には、初年度に相続税課税の対象となる一方、受取った年金に対しては全額所得税課税の対象でした。

しかし、長崎の主婦が国を相手取って、年金受け取りの死亡保険金の相続税と所得税の二重課税の取り消しを求めた裁判において、2010年7月6日の最高裁判決では、年金払い型の死亡保障保険の年金への課税について、その年金受給権がみなし相続財産として相続税課税されたにもかかわらず、その年金に対しても雑所得として課税されるのは二重課税に当たるとして、国の主張を退け、原告の主張を認める判決が下されました(四名の裁判官全員一致の判決)

本裁判は、長崎の一主婦が原告として国を相手取って裁判を起こしたものであり、第一審の長崎地裁では原告が勝訴したものの、第二審の福岡高裁では原告が敗訴していましたが、最高裁での原告の逆転勝訴の判決により、国の敗訴が確定しました。

当時、この判決は保険業界に衝撃を与えるほどのインパクトがありました。詳しくは次のボタンをクリックしてご参照下さい。

2010年7月6日最高裁判決

根拠法令・関連条文

相続税法
第二四条(定期金に関する権利の評価)
定期金給付契約でその契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、次の各号に掲げる定期金又は一時金の区分に応じ、その各号に定める金額による。

一 有期定期金 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
イ その契約に関する権利を取得した時においてその契約を解約するとしたならば支払われるべき解約返戻金の金額
ロ 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、その契約に関する権利を取得した時においてその一時金の給付を受けるとしたならば給付されるべきその一時金の金額
ハ その契約に関する権利を取得した時におけるその契約に基づき定期金の給付を受けるべき残りの期間に応じ、その契約に基づき給付を受けるべき金額の一年当たりの平均額に、その契約に係る予定利率による複利年金現価率(複利の計算で年金現価を算出するための割合として財務省令で定めるものをいう。第三号ハにおいて同じ。)を乗じて得た金額
三 終身定期金 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
イ その契約に関する権利を取得した時においてその契約を解約するとしたならば支払われるべき解約返戻金の金額
ロ 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、その契約に関する権利を取得した時においてその一時金の給付を受けるとしたならば給付されるべきその一時金の金額
ハ その契約に関する権利を取得した時におけるその目的とされた者に係る余命年数として政令で定めるものに応じ、その契約に基づき給付を受けるべき金額の一年当たりの平均額に、その契約に係る予定利率による複利年金現価率を乗じて得た金額